なぜ終活を家族に伝えられないのか?
「終活を始めたことを家族に話したい。でも、言ったら不安にさせるのでは…」
「“もうそんなに弱ったのか”と見られるのが怖い」
そんな気持ちを抱く人は少なくありません。
実際、終活をしている本人にとっても「話す」ことは大きなハードルです。
大切な家族を心配させたくない。自分への対応が変わるのではないかという不安。
その優しさが、逆に「伝えない」という選択につながってしまうのです。
📊 豆知識
内閣府「令和6年版 高齢社会白書」によれば、終活の準備が必要だと感じている高齢者は約4割。しかしそのうち、実際に行動できていない人は約3割にのぼります。
「やらなきゃ」と分かっていても動けない背景には、この“話すことへの心理的ハードル”が潜んでいるのです。

たしかに…心配させたくないって思うと、口に出すのが難しいんだよね。

でもね、伝えることは“重荷を背負わせる”んじゃなくて、“安心を一緒につくる”ことなんだよ。
終活を家族に伝えるメリット
Q1. 終活をしていることを言ったら、家族が落ち込むのでは?

むしろ逆でね、“知らない”ことが家族にとって一番の不安なんだ。小さくても本人の気持ちを知れると安心に変わるんだよ。
1. 家族が一番不安なのは「知らないこと」
本人がどんな考えを持っているのか分からないまま時間が過ぎると、家族は「何をしてあげればいいのか」迷い続けることになります。
“知らない”という状態は、実は本人以上に家族の心を落ち着かなくさせてしまうのです。
たとえば、「もし入院したらどんな医療を望んでいるのか」「どんな暮らしを大切にしたいのか」が分からなければ、いざというときに家族は戸惑いと不安を抱え込むことになります。
逆に本人が「こうしたい」と少しでも話しておくことで、家族は「じゃあ自分はこうサポートしよう」と前向きに動くことができるのです。

そうかぁ…“言わないほうが安心”じゃなくて、“知ってるほうが安心”なんだね。
2. 後悔やすれ違いを防げる
葬儀や介護、財産のことなど、本人の意思が分からないまま決めざるを得ない状況になると、家族の中で「本当にこれでよかったのかな」という後悔が残りやすくなります。
特にきょうだい同士で考え方が分かれると、「お父さんはきっとこう思っていたはず」という推測合戦になり、すれ違いや対立の火種になることもあります。
しかし、一言でも「自分はこうしたい」と伝えておけば、家族は迷わずに動けます。
たとえ全部を細かく決めていなくても、「母はこういう思いを持っていた」と知っているだけで、判断の軸が生まれるのです。

たしかに、“分からないまま決める”って一番つらいかも…。残された人に迷いを残しちゃうんだね。
3. 話すことで家族との絆が深まる
「話す=重くなる」と思いがちですが、実際には逆で、「あなたの考えを知れてよかった」と絆が深まるケースも多いのです。本人の言葉を通じて、「どんな暮らしを望んでいるのか」「大切にしていることは何なのか」を共有できれば、家族は安心感と信頼を得ます。
小さな一言が、「これから先も一緒に考えていこう」という前向きな姿勢を家族に芽生えさせるのです。
終活を家族に伝えるやさしい切り出し方
Q2. 具体的にどう切り出せばいいの?

“終活してる”って言うより、“安心して暮らしたいから準備してるんだ”って伝えるといいんだって。
「終活してるよ」とストレートに言うと、どうしても身構えられてしまいます。
そこで大切なのは、“未来を一緒に考える会話”として自然に切り出すこと。
次のような工夫で、抵抗感を減らしつつ伝えることができます。
1. 「安心したいから」と前向きに伝える工夫
「心配させたいわけじゃなくて、安心して暮らしたいから準備を始めたんだ」
そう伝えると、“死の準備”ではなく“家族と一緒に安心を育てるための行動”として受け止めてもらいやすくなります。
📌 たとえば夕食の団らんで「最近ちょっと片づけを始めたんだ。安心して暮らしたいからね」と軽く言うだけで、会話のトーンが重くならず自然に流れていきます。
2.「もしも」の仮定から自然に話を始める
「もし入院したら、こんなサポートが欲しいんだよね」
「もし旅行に行けなくなったら、家ではこういう風に過ごしたいな。」
“もしも”という枕詞は、仮定の話として会話を柔らかく始められる魔法の言葉です。
本人が真剣に「終活をしている」と言うよりも、家族みんなが自然に参加できる雰囲気になります。
📌 実際に「もし避難するとき、何を持っていく?」と雑談から入ったら、思わず本音が出て「薬は忘れないようにしたいな」と話が広がった、という声もあります。
3. 思い出や人生の話から未来につなげる
「そういえば、若い頃の夢はこうだったんだよ。」
「一番楽しかった思い出ってこうだったんだよね。」
こうした人生を振り返る問いかけは、本人にとっても語りやすく、家族にとっても温かい時間になります。そこから「これからはこういう風に楽しみたくて終活始めているんだ」と未来の会話に自然につなげられます。
📌 あるお母さんは「昔はもっと旅行したかった」と笑って話したことをきっかけに、「じゃあ、もし行けなくなったときはどうしたい?」という会話につながったそうです。
4. 「一緒にやろう」と家族を巻き込む
一人で準備していると重荷になりがちですが、「一緒に思い出整理をしよう」「一緒にアルバムを眺めよう」と家族を巻き込めば、自然に「これから」の話も出てきます。共に楽しむ”時間として伝えるのがコツです。

大事なのは、“重たい話”じゃなく“自然な会話の延長”にすること。ちょっとした一言から未来の安心につながっていくんだよ。
終活を家族に伝えた体験談|安心につながる実例エピソード
体験談① 日常会話から自然に伝えられたケース
「ある日、家族で夕食を囲んでいるときに、ふと“もしものとき”の話題がニュースから出ました。
その流れで私は『実は少しずつ準備を始めているんだ』と口にしてみたんです。
一瞬驚いたように家族が顔を見合わせましたが、息子が『そうなんだ。早めに考えてくれているなら安心だね』と笑って言ってくれました。
そのとき、“伝えるのは怖いことじゃなくて、むしろ家族に安心を渡すことなんだ”と実感しました。」
体験談② 家族に手伝ってもらえたケース
「定年後に一人で少しずつ整理をしていましたが、思った以上に書類や手続きが多くて進まなくなってしまいました。“自分で全部やらなきゃ”と思い込んでいたのですが、ある日思い切って家族に『実は整理をしてるんだけど、なかなか進まなくてね…』と話してみたんです。
すると娘が『じゃあ一緒にやろうよ!』と笑って机に向かってくれて、息子もパソコンで調べ物を手伝ってくれました。
それまで一人では途方に暮れていたことが、あっという間に片づいていきました。
そのとき、“終活は一人で抱え込むものじゃない。家族と分け合えば、不安も作業もずっと軽くなるんだ”と心から感じました。」
まとめ|本人が伝えることが家族の安心の種になる
「家族を不安にさせたくない」という思いは優しさから生まれるもの。
けれど、その優しさを“伝えない”という形にしてしまうと、かえって家族に大きな負担や迷いを残してしまいます。
本人から伝えることには、大きなメリットがあります。
- ✅ 家族の不安が減り、安心を共有できる
- ✅ 後悔やすれ違いを防げる
- ✅ 家族との絆が深まる
- ✅ 作業や準備も一緒に進められて、負担が軽くなる
終活を伝えることは、弱さを見せることではありません。
家族と一緒に未来を安心にするための、大切なコミュニケーションです。

今日からできるのは、“安心のために少し話したい”というひとこと。
それが家族との信頼を深め、未来を優しく照らすきっかけになるんだ。